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前橋地方裁判所 平成7年(ワ)460号 判決 1999年11月19日

甲・乙事件原告

丸橋賢

右訴訟代理人弁護士

田中善信

甲事件被告

社団法人群馬県歯科医師会

右代表者理事

今成虎夫

乙事件被告

村上徹

右両名訴訟代理人弁護士

丸山和貴

足立進

主文

一  乙事件被告村上徹は、甲・乙事件に対し、金六〇万円及び内金五〇万円に対する平成五年五月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  甲・乙事件原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、甲・乙事件原告に生じたものの四分の一及び乙事件被告村上徹に生じた費用の二分の一を乙事件被告村上徹の負担とし、その余を全て甲・乙事件原告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

(以下、甲・乙事件原告を「原告」と、甲事件被告群馬県歯科医師会を「被告県歯科医師会」と、乙事件被告村上徹を「被告村上」という。)

第一  原告の申立て

(甲事件)

一  原告が被告県歯科医師会の会員たる地位を有することを確認する。

二  訴訟費用は被告県歯科医師会の負担とする。

(乙事件)

一  被告村上は、原告に対し、金五五〇万円及び内金五〇〇万円に対する平成五年五月二一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告村上は、前橋市歯科医師会の会報の一面下段に二段抜きで、別紙一記載の謝罪文を、見出し及び被告村上の氏名は四号活字をもって、その他は五号活字をもって一回掲載せよ。

三  訴訟費用は被告村上の負担とする。

四  右一につき仮執行宣言。

第二  事案の概要

本件は、被告県歯科医師会から除名処分を受けた原告が、被告県歯科医師会に対し、右除名処分は無効であるとして、被告県歯科医師会の会員としての地位の確認(甲事件)と、被告県歯科医師会の元専務理事である被告村上に名誉を毀損されたとして、同人に対し、損害賠償金五五〇万円及び弁護士費用を除く金五〇〇万円に対する不法行為の日の翌日から民法所定の遅延損害金並びに謝罪文の掲載(乙事件)をそれぞれ求めた事案である。

一  前提となる事実(争いのない事実及び掲記の証拠等により認められる事実)

1  当事者

(一) 被告県歯科医師会は、昭和二二年一一月一日、群馬県を区域とし、医道の高揚と歯科医学、医術の進歩発達と公衆の口腔衛生の普及向上を図り、社会ならびに会員の福祉の増進を目的として、区域内の歯科医師を会員として設立された社団法人であり、任意加入団体であるが、その活動は、歯科医学に関する事業の他、歯科技工士・歯科衛生士・歯科助手の教育に関する事業、社会保障に関する事業などに及んでおり、その会員は区域内の郡市を区域とする地区歯科医師会(前橋市歯科医師会等)の会員を兼ねる。

(甲一、乙一)

また、被告県歯科医師会には、群馬県内の九〇〇名を超える歯科医師のうち、一〇名程度を除く大半が加入し、それぞれ健康保険法所定の登録を受けた歯科医師(以下「保険医」という。)として診療活動をしている。

(原告本人、弁論の全趣旨)

被告村上は、平成五年五月ころ、被告県歯科医師会の専務理事の職にあったものである。

(二) 原告は、昭和四九年、群馬県高崎市に丸橋歯科クリニックを開業した歯科医師で、かつて保険医であり、同年に被告県歯科医師会の会員となり、昭和六一年度及び昭和六二年度は、被告県歯科医師会の理事で広報部長を務めていた。(乙五二)

2  原告に対する個別指導等

原告は、平成二年二月二七日、群馬県保健課(以下「県保健課」という。)から個別指導(健康保健法に基づく保険診療に関する行政指導)を受け(以下「本件個別指導」という。)、その患者に対する実態調査、同年七月一一日の監査(健康保健法に基づく調査)をされた結果、診療報酬の請求に誤りがあるとして、県保健課から同年九月一八日付けで自主点検調査を依頼する文書の送付を受けた。その間の同年五月一一日、原告は保険医を辞退する旨県保険課に届け出て、受理された。(甲一六〇の6)

3  原告の除名

被告県歯科医師会の定款は、「本会の体面をけがした者」、「本会の綱紀を乱した者」を被告県歯科医師会の除名事由として規定しているところ(定款一五条一項二、三号)、被告県歯科医師会は、平成六年一一月一〇日、原告に対し、「群馬県歯科医師会第一八一回代議員会において、あなたを、本会定款一五条二号、三号所定の事由に該当するものと認め、平成六年一一月九日付けを以て除名処分することが決議されました。」、「なお、この処分に不服があるときは、この通知を受けた日から三〇日以内に書面により異議の申し立てをすることができます。」等と記載された書面を送付した(以下同書面を「本件通知書」と、同書面により通知された除名処分を「本件除名」という。)。被告県歯科医師会において、右本件除名の通知以前に、原告に右除名事由の具体的内容を告知したり、これに対する弁明を聴取したりしたことはなかった。(甲三)

4  被告村上の発言

被告村上は、平成五年五月二〇日、前橋市歯科医師会館において、前橋市歯科医師会の会員に対し講演をしたが、その中で概ね次の(一)ないし(七)のような内容を発言した。(乙五〇の1、2)

(一) 「丸橋君とつきあってみると分かるのですが、彼は非常に思いこむ性格の激しい男です。それが他人から批判されるということは絶対耐えられない。まぁ、一言で申したらこれは教祖タイプといわざるを得ない。新興宗教の教祖のような性格がある。」

「著しく目につく特徴というのは、彼の異常な性格、こういった異常な性格、非常に思いこみが激しい。こうあってもらいたいという願望あるいは幻想がいつしか事実になってしまうというようなところが非常にあります。」

(二) 「歯科の世界で、丸橋氏の歯槽膿漏のような本が出て、しかもそれが素人に売れるばかりか玄人であるべき歯科医にすら読まれている事実を何としたらいいのか、これだけの悪書は珍しいというぐらいの非常に痛烈な手紙が(高橋晄正から)私のところに参りまして、……丸橋君の思想を検討するがてらに読んでみましたら、実に一々ご尤もなことがたくさん書いてありました。」

(三) 「『市民運動というのは、とかく非科学的になりやすい。それで、その非科学的になりやすい運動を主催するのはどうも科学者の顔をした新興宗教の教祖である……』と(高橋晄正の手紙に)書いてある」

(四) 「高橋氏が強く指摘するのは、丸橋先生という方は何ら事実に基づかない嘘を平気で書ける巧みな人間だということで、膿漏ということについてでもそうです。……これは聞いたら大変な卒倒しそうなことを平気で言うわけです。ところが……そんなものの根拠はどこにもない……」

(五) 「彼は……研究というものははっきりいって何も知らない。ただ一見尤もらしい事を書いて、深く読まない人になるほどそうかと思わせる技術では、これは天下一品ですね。……これは科学の世界ではやってはいけない部分です。」

(六) 「歯界展望という雑誌には、この丸橋君を贔屓にする編集者が一人おりまして……(原告は)この雑誌が自由自在ですから、……これでかれは全国的に有名になった。」

(七) 「丸橋君は……あらゆる世界で講演し、講演が大好きで、講演でメシ食っているんじゃないかと思われるくらいで、……彼のところの機関誌かなんか見ますと講演の申し込みはこちらにと電話番号が書いてありまして、……高崎の幼稚園でしたかな、PTAが講演を申込みに行ったら、料金がいくらと言ったらそんな金で君、僕の講演が聴けると思うのかいなどと言われたので、PTAのお母さんはびっくりして、この先生は普通のお医者さんとは違うのだなということを言ったということを私の友人が話してくれました」

二  争点

本件の争点は、甲事件については、①原告に対する本件除名手続が適正か否か、②本件除名の除名事由の存否、乙事件については、③被告村上の発言について不法行為(名誉毀損)の成否、④右不法行為が成立した場合の謝罪広告を命ずることの適否及び損害額であり、それぞれについての双方の主張の要点は、次のとおりである。

1  争点①(本件除名手続の適否)について

(被告県歯科医師会の主張)

(一) 被告県歯科医師会の定款及び同施行規則(以下「規則」という。)には、処分理由の開示を定めた規定はなく、開示の要否、時期、程度は、被告県歯科医師会の裁量に委ねられていると解すべきである。

被告県歯科医師会は、原告に対し、原告の理由開示の請求に基づいて、処分理由の概要を通知しているのであるから、原告は、異議申立書においてこの点に関する反論等を記載することは可能であったはずである。

また、除名の効力は代議員会の議決並びに被処分者に対する処分の通知によっては生じず、被処分者の異議申立期間の経過によって生ずると解されるので、本件では除名処分の効力が生ずる前に処分理由の開示が行われているものである。

したがって、本件除名手続に定款・規則違反はないし、本件において、原告が異議申立権を実質的に制限された経緯もない。

(二) 適正手続の理念から、除名処分のいずれかの段階で本人に弁明や反論の機会を付与することは必要であろうが、どのような段階・方法で本人にかかる機会を与えるべきかについては、当該団体の性格によって異なると考えられる。

被告県歯科医師会は任意加入団体であり、その定款・規則によれば、被処分者が処分に不服であれば、異議申立てに基づき理事会で再検討された後、総会に再審を諮ることになっている。そして、被処分者は理事会において反論した上、総会で意見を述べ、再審の機会を得ることができる。そうすると、このような手続の定め方が被告県歯科医師会の民主的運営の必要性や原告に対する適正手続の保障を著しく損なうとは到底いえず、これらの規定に基づく除名処分が信義則や公序良俗に反することはない。

(原告の主張)

(一) 除名処分は被除名者に多くの不利益を与えるのであり、また、被告県歯科医師会の規則が除名処分に対しては三〇日以内に異議の申し立てができると規定していることからすると、被告県歯科医師会の定款・規則上、除名処分の通知をなすときは、その理由を明示することが要求されていると解すべきところ、本件通知書には、「本会定款第一五条二号、三号所定の事由に該当する者と認め」と記載されているのみで、原告のどのような行為が、どのような理由で右事由に該当するかが記載されていない。

そうすると、処分理由が記載されていない通知書による本件除名は、定款・規則に違反し、無効である。

(二) また、除名処分が当該団体からの強制的な離脱という強い効果を有すること、団体の設立目的を適正に遂行していくためにその運営に構成員の意思を反映させるべきであるという民主的運営の必要性があること、及び誤った除名処分を予防し、除名対象者が構成員として享受している利益を保護するという適正手続が要請されることに照らすと、団体法の一般法理上、除名対象者に対して除名処分を決定する前に弁明及び反論の機会を与えることが要求されるものと解するのが相当である。

したがって、少なくとも除名対象者が除名処分の理由の開示を請求した場合には、除名理由に該当する事実を特定した上で、具体的な除名の理由をその処分の決定前に開示し、反論の機会を与えなければならないというべきであり、これに違反した除名処分は、信義則又は公序良俗違反として無効になると解すべきである。

本件では、原告は、除名処分直前に除名理由開示の要求をしているにもかかわらず、被告県歯科医師会は全くこれに応じず、右除名理由の処分決定前開示義務に違反しているものである。

よって、本件除名は、信義則、公序良俗に違反して無効である。

2  争点②(除名事由の存否)について

(被告県歯科医師会の主張)

(一) 個別指導等不当弾圧喧伝(除名理由1)

原告は、県保健課による個別指導、実態調査及び監査は被告県歯科医師会役員による意趣返しであり、被告県歯科医師会役員と県保健課が結託して行った不当な弾圧であるとマスコミを通じ喧伝した。

右行為は、国民皆保険制度の下、医療保険の維持充実に積極的に取り組む被告県歯科医師会や医療保険制度自体に対する国民及び県民の信頼を失墜させたのは勿論、歯科医師法の定める歯科医師の基本的任務に違背し、被告県歯科医師会会員としての品位、医道をけがす行為である。

(二) 囮患者派遣等による告発等(除名理由2)

原告は、平成二年ころ、個別指導に対する対抗措置として、当時の被告県歯科医師会役員らの診療所に囮患者を派遣し、その結果、同会役員らが不正請求をなした等として、右囮患者らをして右役員らを詐欺罪で告訴告発させ、県保健課に調査の申立てをさせた。

右行為は、患者を自ら治療すべき歯科医師の基本的責務を放棄した違法なものであり、医道を汚し、歯科医師としての品位を損ずる行為である。また、右行為が、被告県歯科医師会会員に与えた不快感や萎縮効果は大きく、会員の福祉に反する行為であるし、また、被告県歯科医師会会員相互間の信頼関係を破壊し、被告県歯科医師会の組織に与えた影響は甚大である。

(三) 誹謗・中傷記事等(除名理由3)

また、原告は、別紙二記載のとおり、各種マスコミへの投稿、取材に対する発言などを通じ、被告県歯科医師会、その役員及び会員を誹謗する言動をなし、また、虚偽の事実を公然と摘示し、被告県歯科医師会の名誉、信用を著しく棄損した。

(四) 不当陳情等(除名理由4)

原告は、群馬県知事(以下「県知事」という。)に対し、群馬県歯科医療サーベイランス民間委員会代表として、平成五年二月一七日付けで、指導医療官を中央から派遣すること等を求める陳述書を提出したが、その中で、被告県歯科医師会の役員が不正請求をしている旨指摘した。

また、原告は、同年四月三〇日、厚生大臣に対し、群馬県において不祥事が相次いでいるなどと虚偽の事実を指摘したうえで、群馬県に対する指導を強められたい旨の陳情書を提出した。

更に、同年一二月一〇日には、群馬県において架空請求・水増し請求等が相当広く日常的に行われている等と記載した要望書を健康保健組合外の県内外の関係四三二団体に送付した。

右行為は、特段の根拠もなく他の保険医を無責任に批判し、真面目に保健医療に従事する多くの会員を冒涜するものであり、医道をけがし、歯科医師としての品位を毀損する行為であることは明白である。

(五) 脅迫的言辞(除名理由5)

原告は、被告県歯科医師会副会長の被告村上に対し、平成六年七月一六日、同人のした診療がすぐ駄目になるとの訴えがあったこと、右治療行為は犯罪的といえること、したがって、患者に金を返すべきであり、その旨の誠意ある回答が示されない場合は相応の措置を取る等と脅迫的言辞を行った。

右行為は、医道をけがし、歯科医師としての品位を損ねるものである。

(六) 以上のとおり、原告の右各行為は、いずれも被告県歯科医師会の定款一五条二、三号が定める除名事由である「本会の体面をけがし」、「本会の綱紀を乱した」に該当することは明らかである。

(原告の主張)

(一) 除名理由1について

原告に対する指導と監査は、以下のとおり、被告県歯科医師会の役員と行政との癒着による不当なものであり、原告が発表した記事は真実そのものであって、右記事が国民、県民の信頼を失墜させることになるなどとする被告県歯科医師会の主張は本末転倒である。

(1) 手続的違法について

社会保健医療担当者監査要綱(昭和二八年六月一〇日保発第四六号都道府県知事宛厚生省保険局長通知)は、被監査医療担当者せん衡の標準について、①診療内容に不正又は不当があったことを疑うに足りる理由があって、監査を行う必要があると認められるもの、②診療報酬の請求に不正又は不当があったことを疑うに足りる理由があって、監査を行う必要があると認められるものと規定し、監査の方法については、つとめて診療に支障のない日時を選び、監査実施の日時、場所をあらかじめ被監査医療担当者に通知することと規定している。また、「社会保険医療の不正請求に対する指導及び監査について」(昭和四八年二月八日保発第七号都道府県知事宛厚生省保険局長通知)は、診療の内容又は診療報酬の請求に不当の事実があると思われる場合は、すみやかに指導を行うこととし、更に一定期間継続して指導しても尚改善されないときには監査を行うこと、診療の内容又は診療報酬の請求に不正の事実が明らかにあると思われる場合で、必要があると認められるときは監査を行うこととしている。また、「社会保険医療の不正請求等に対する指導及び監査について」(昭和四六年二月八日保発第一四号都道府県保健課長宛厚生省保険局医療課長通知)は、通常は、指導を実施した後でなければ監査を行わないことになっているが、刑事罰に該当するようなものもあるので、かかる事例については、直ちに監査を行うことができるものとしている。

右のとおり、監査を実施するためには、既に予約済みの多くの患者に解約、新なる予約を連絡し、診療記録などを整理の上準備しなければならないので、つとめて診療に支障のない日時を選ばなければならないところ、本件監査により、原告は、七三名の患者に対し、一か月後への治療日の変更をお願いすることになり、患者によっては、再度歯形を取り直したり、金冠などの補綴物などが合わなくなってしまい、回復困難な損害が発生するので、県保健課に対し、二週間程度の実施延期を要請したところ、患者の予約を取り消すようにと回答された。

したがって、本件監査は、要綱の定める方法に反するばかりか、原告に対し、回復困難な損害を被らせることとなる裁量権の範囲を著しく逸脱した違法なものである。

また、相手方に不利益を与える行政処分は、処分の公正と適正手続の履行を担保し、不服申立ての結果につき予測可能性を与える意味から、理由の付記を要すると解すべきところ、本件監査の場合は、その命令書に「健康保険法四三条ノ一〇及び国民健康保健法四六条の規定に基づき」との概括的な記載があるのみで、原告が同条のいかなる事由に該当したため監査が行われたかを確認することは不可能であるから、不正かつ不当な処分と言わざるを得ない。

(2) 内容的違法について

本件監査は、平成元年一月一日以降診療した患者に係る一切の診療録等、未整理の伝票等を含む権利関係帳簿、平成元年一月一日以降の従業員及び賃金台帳、一人別源泉徴収簿、平成元年一月一日以降の従業員及び賃金台帳、一人別源泉徴収簿などを持参することも命じているが、保険診療の適正を図る監査には過ぎた要求内容というべきであり、甚だ不正かつ不当な要求である。

(3) 右のとおりであるから、このような監査は、県保健課が被告県歯科医師会執行部と示し合わせて行う以外考えられないものである。

(二) 除名理由2について

原告が、被告県歯科医師会と県保健課の癒着による個別指導や監査に対し、対抗措置に出ることは勇気ある行動と理解すべきである。

また、原告はその協力者に対し、協力を求めたことはあるが、決して強制したものではなく、また、原告自身その患者さんから治療は一切求められていないので、診療義務違反にはならない。

(三) 除名理由3について

被告県歯科医師会が原告の発言を取り上げてそれを除名理由と主張するのは、会員の言論の自由を抑圧するものである。

現行の医療行政は、医師会、歯科医師会などの関係団体との信頼関係を前提として、密接な協力関係によって実施され、歯科医療は歯科医師会如何にかかっているのであり、歯科医師会は行政の末端組織的性格をも有している。したがって、被告県歯科医師会は公的色彩が強い団体であり、被告県歯科医師会やその関係者は批判を甘受すべき立場にもあると言うべきである。そして、県保健課と被告県歯科医師会が癒着しているということは広範囲に知れわたっていることであり、原告がテレビ等で発言したことや週刊誌に記載されたことは全て真実である。

(四) 除名理由4について

原告が県知事に提出した陳述書の内容は、歯科医療における不正請求につき厳正に調査等を行って欲しいということと、従来のように被告県歯科医師会の会員を指導医療官としないで、中央から癒着のない人を着任させて欲しいということが主旨で、何ら問題となるものではない。また、原告が厚生大臣に提出した陳述書は、支払基金法が保険審査委員は診療担当者、保険者、学識経験者の三者構成とするように定めているにもかかわらず、群馬県では被告県歯科医師会によりほぼ独占されていること、このような構成では公正な審査が行われるはずがないことから、法の趣旨に添った三者構成を実施するよう陳述したもので、当然のことが記載されており、問題となるものではない。さらに、健康保健組合に対する要望書も、当然のことが記載されておりおよそ問題になるものではない。

(五) 除名理由5について

原告は、被告村上により極めて粗暴な治療を受け、ほとんどの歯が再発してしまった患者から相談を受け、相当な行動をしたに過ぎない。

3  争点③(被告村上の不法行為の成否)について

(原告の主張)

被告村上は、前記第二の一4のとおり、平成五年五月二〇日、前橋市歯科医師会の臨時例会において行った講演の中で、要旨、次のとおり、

①原告は、新興宗教の教祖のような性格、(すなわち)異常な性格のために、願望あるいは幻想がいつしか事実になってしまった。②(高橋晄正の言葉を借りる形式で)、原告は、何等事実に基づかない嘘を平気でつける特異な人間であり、その著作「本当は治る防げる歯槽膿漏」は科学的に根拠のない悪辣な文書であって、これだけの悪書は珍しい。喫煙と歯槽膿漏との相関関係についての原告の見解は、根拠は何処にもない(原告の歯槽膿漏を直すための食生活の改善という運動について)。市民運動というのはとかく非科学的になりやすい。非科学的になりやすい運動を主催するのは、科学者の顔をした新興宗教の教祖である。③原告は、一見もっともらしいことを書いて深く読まない人を「うん、なるほどそうかな。」と思わせる技術は天下一品で、商売間違ってるんじゃないかと思うほどであるが、これは科学の世界ではやってはいけないことである。歯界展望には、原告を贔屓にする編集者が一人いるため、この雑誌は原告の自由自在であり、そのため、研究というものを何も知らない原告が全国的に有名になった。④原告は、講演が大好きで、講演でメシ食っているんじゃないかと思われるくらいであるが、幼稚園のPTAが講演の申込みをしたところ、PTAの示した講演料ではとてもできないと言下に断り、PTAのお母さんは、原告は「普通の人とは違う。」、「普通のお医者さんとは違う。」と言っていたと聞いており、原告にはそういうところがある。⑤原告は被告村上に対し、被告村上が専務理事をしている間は自由にレセプトの架空請求ができるのでやってみたらどうかとそそのかす一方で、新聞記者に今成県歯科医師会長が不正請求をしているという嘘の情報を通報する。原告のやり方は一事が万事こうである。

等と発言したが、右発言の内容はいずれも虚偽であり、右発言は、原告の名誉感情を害すると共に、原告の社会的評価を著しく低下させるものである。

(被告村上の主張)

被告村上の発言は、その目的及び内容自体が正当であり、違法性がないので、名誉毀損には当たらない。

すなわち、原告は、各種マスメディアを通じて、被告県歯科医師会と保険課との癒着の事実等を繰り返し発表し、また、群馬県歯科医療サーベイランス民間委員会代表として、知事及び厚生大臣に対し、被告県歯科医師会の役員を誹謗中傷したうえ、群馬県では行政と被告が癒着し、不祥事が相次いでいるので指導を強化されたい旨の陳情をした。

右一連の言動により、被告県歯科医師会は、信頼と名誉を取り戻し、行政官庁との信頼関係を回復するため、原告の言動を追認したと受け取られないように、反論せざるを得なかった。

そこで、被告県歯科医師会は、会員の署名を得て陳情書を提出することとし、会員の賛同を得るため、原告の一連の言動を正確に理解して貰う必要があったことから、被告県歯科医師会の専務理事であった被告村上が、被告県歯科医師会の会員を兼ねる前橋市歯科医師会の会員に対し、原告の問題につき理解を求めるために右発言に及んだものである。

右のとおり、被告村上は、原告の言動により失われた被告県歯科医師会の名誉・信頼を回復するため、正当な目的のもとに根拠ある事実を発言したものであり、何等違法でない。

4  争点④(謝罪広告の適否と損害額)について

(原告の主張)

(一) 原告の社会的評価の低下を回復するためには、前橋市歯科医師会の会報に別紙一記載の謝罪文を掲載する方法が最も適切である。

(二) また、本件発言により原告が被った精神的被害を慰謝するためには、慰謝料として、少なくとも五〇〇万円の支払が相当である。

さらに、原告は、本件を原告訴訟代理人に委任するにあたって、弁護士費用として金五〇万円の支払を約した。

(被告村上の主張)

弁護士費用の点は不知、その余は争う。

第三  当裁判所の判断

一  争点①(本件除名手続の適否)

1  除名処分手続と被処分者に対する処分事由の開示

(一) 被告県歯科医師会は、その加入自体が任意であり(定款七条、一二条)、弁護士会や税理士会といった法律上その業務を行う前提としてその団体に加入することが必要とされているいわゆる強制加入団体とは異なり、その加入が歯科医師としての業務上不可欠とされているものではないが、歯科医師間の単なる親睦団体ではなく、医道の高揚と歯科医学、医術の進歩発達と口腔衛生の普及向上を図り、社会並びに会員の福祉の増進を目的として設立された団体であり(定款三条)、群馬県内の歯科医師の大部分が加入し、構成員数も約九〇〇名と多数であって、また、歯科技工士、歯科助手などの教育や社会保障に関する事業を行っていることなどからすると、被告県歯科医師会は国民の生活、健康の維持といった公共的任務又は役割を担った存在であるといえる。

したがって、その組織はもとより、所属員に対する規律・統制等を含めて、その運営が民主的であることが要請される。そして、歯科医師も被告県歯科医師会に加入していることで、保険医として必要な健康保健法等についての教育、指導等を受ける等の利益を得ていることからすると、その身分の得喪は歯科医師にとって重大な利害関係を有するから、その会員たる地位を不当に奪うことは許されないものといえよう。

これを除名手続の観点から見れば、被告県歯科医師会の定める諸規定に従った手続が履践されることが必要であることは当然であるが、当該除名処分が被告県歯科医師会の自治規範の定める除名手続に従ってなされた場合であっても、右規範において、除名対象者につき、除名手続における一方当事者としての地位を承認して参加させ、除名対象者に対して除名要件に該当する具体的事由を告知し、これにつき除名対象者から意見聴取並びに反論及び反対証拠提出の機会を与える等民主的かつ公平な手続が定められておらず、かつ当該処分がこのような手続を履践しないでなされた場合には、当該処分は適正手続を欠くものといえよう。

(二) この点に関し、原告は、除名対象者に対し、除名処分を決定する前に弁明反論の機会を与えることが、団体法の一般法理上当然に要求され、この手続を欠く除名処分は無効であると主張する。

たしかに、処分前に処分理由を告知し、反論の機会を与えることがあるべき姿であり、当該団体加入が業務遂行の要件となるようないわゆる強制加入団体の場合は、その適正手続の要請も強く、処分理由の事前告知を欠く除名処分はその効力を問題とする余地もあろう。

しかし、被告県歯科医師会のように、その存在が公共性を持つとはいえ、その加入が歯科医師としての業務の前提要件とされていない任意加入団体の場合には、右適正手続の要請も強制加入団体の場合と比較して低いものと解され、除名処分決定後であっても処分対象者に処分理由が開示され、これに対する異議申立て及びこれに伴う弁明の機会があり、それによって処分を見直す機会が保障されている場合には、処分理由の開示が処分後になされたとしても、右異議申立権の行使が実質的に可能な時期に開示されたのであれば、適正手続の要請を著しく欠くとはいえない。さらに、処分対象者が処分を受けた時点で処分理由を既に知っていたり、処分理由を知り得たような場合には、処分理由の事前告知を欠くことによる右適正手続欠缺の瑕疵は重大なものとはいえず、処分の無効を招来することはないものと解するのが相当である。

2  そこで、被告県歯科医師会の除名についての規定、本件除名手続及び本件除名の時点での原告の認識を検討するが、前記前提となる事実、証拠(以下、適宜証拠番号を摘示する。)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件除名の経緯(甲一〇の1〜3、一一の1、2、一二、一三、二九〜三二、四二〜五二、六二、乙三〜一〇、一五〜二五の1、2、二七、二九〜四二、五一、五二、六三、証人神戸義二、同間仁恭一、同田中順、原告本人、被告県歯科医師会代表者、被告村上本人)

(1) 被告県歯科医師会においては、昭和五七年四月一日から平成四年三月三一日まで、五期一〇年にわたって神戸義二が会長を務めていた。

(2) 原告は、昭和五七年ころ、群馬県内に歯科技工士学校を設立しようと考え、当時会長であった神戸義二に対し設立に賛成するよう要請したこともあったが、同人の賛成を得られず、群馬県の歯科技工士会の反対等があって、結局、歯科技工士学校設立には至らなかった(以下「歯科技工士学校問題」という。)。

(3) 原告は、昭和六三年二月一八日に行われた被告県歯科医師会の会長選挙において、会長であった神戸義二の対立候補を立てその選挙運動に参画したが、結局、神戸義二が再選された。

右選挙後の同月二〇日ころ、高崎市内の歯科医師数名に対し、県知事名で「社会保険医療担当者(歯科)の個別指導の実施について(通知)」と題する書面が送付され、その中に個別指導の実施日時、会場、携行品などが記載されていたが、間もなく右各文書はいずれも偽造されたものであることが判明した(以下「公文書偽造事件」という。)。

(4)ア 平成二年ころには、原告は、右歯科技工士学校問題や公文書偽造事件などを経て、被告会の役員と対立するようになっていったところ、その頃実施された本件個別指導や実態調査は被告県歯科医師会と県保健課が癒着して行われたと考えたことから、被告県歯科医師会の幹部による診療報酬の不正請求を明らかにして法廷での決着を付けようと考え、その証拠を固めるため、同年四月ころから、原告が主催する「自然といのちを守る県民会議」という自然保護団体の会員約三〇人に協力を要請し、そのころ被告県歯科医師会の会長であった神戸義二や現会長である今成虎夫、その他役員又はかつて役員であった近藤達夫、田中順、間仁田恭一、宮下一夫及び右神戸義二の息子である神戸英明などの各診療所に右会員らを患者として送り込み、受診させ、診療報酬請求についての情報収集を開始した。

右情報収集を行うに際し、原告は、事前に、自らの経営する歯科診療所の丸橋クリニックにおいて、レントゲンを撮るなどして各協力者の歯の状態を記録に残し、協力者らが各診療所での治療を終えると直ちに協力者の口腔内の状況を確認し、協力者が受けたと申告する治療の内容や治療費との相違から不正請求の発見に努め、これを協力者が右各診療所に通院している間継続した。

イ 右情報収集の結果、原告は右各診療所において不正請求が行われていると判断し、協力者をして、宮下一夫歯科医師外三名を前橋地方検察庁高崎支部に歯科医師法違反、国家公務員法違反又は詐欺罪などで告訴・告発させると共に、県保健課に対し、調査の申立てを行った。

平成二年八月ころ、県保健課による調査が実施された後、田中順は一部過誤請求を認めて自主点検の申告をし、国庫に三万〇九二〇円、患者に二八〇円を返還した。

平成三年までには、右告訴・告発は取下げ、又は不起訴によりいずれも終了した。

(5) 被告県歯科医師会の執行部においては、平成四年になって、右に対応するべく、専務理事であった被告村上において原告に被告県歯科医師会の裁定委員会に出席して意見を述べることなど要請したが、原告はこれを断った。

(6) 原告は、平成五年ころから、「歯界展望」、「近代口腔科学研究会雑誌」などの各種雑誌、新聞等に被告県歯科医師会と県保健課が癒着していること、被告県歯科医師会の役員らは診療報酬の不正請求を行っていること、被告県歯科医師会の執行部は不正請求についての訴えをもみ消していること等を指摘するなどした。

(7) また、原告は、平成五年二月一七日、群馬県歯科医療サーベイランス民間委員会代表として、群馬県知事に対し、被告県歯科医師会の役員が診療報酬を不正に請求している旨の陳情書を提出し、同年四月三〇日には、厚生大臣に対し、群馬県では不祥事が相次いでいると指摘して群馬県への指導強化を陳情し、同年一二月一〇日には、健康保健組合等の県内外の関係四三二団体に対し、群馬県において診療報酬の不正請求が広く行われているとして、診療報酬に関するチェックを強化するよう要望書を送付した。

(8) これらの原告の言動の結果、原告と被告県歯科医師会の執行部とは激しく対立する状況となり、平成六年七月には被告県歯科医師会執行部において原告の処分の検討に入り、同年一一月九日付けの本件通知書により本件除名がなされた。

(二) 被告県歯科医師会の除名手続の規定(甲一、二、乙一、二)

(1) 被告県歯科医師会の定款は、「本会の体面をけがした者」、「本会の綱紀を乱した者」を除名事由として規定し、除名に関する規則は別に定めるとしている(定款一五条一項二、三号、二項)。

(2) 右定款の定めを受けて、規則は、除名手続に関して次のとおり規定している(規則一五条)。

ア 会長は会員が定款一五条(一項)一号より五号までのいずれかに該当すると認めたときは、その調査書を作成し理事会の議を経て処分案を決定し、意見書を付し裁定委員会に諮る。

同委員会の答申を得たときは、その答申書ならびに処分案を代議員会に提出して処置を決定する(同条一項)。

イ 会長は代議員会の議決に基づき処分方法を決定し、その決定事項を所属の郡市区歯科医師会長ならびに本人に通知するものとする(同条二項)。

ウ 当該会員は前項による処分に不服があるときは、会長に対してその通知を受けた日から三〇日以内に書面による異議の申立てをすることができる(同条三項)。

エ 前項の異議の申立てがあったときは、会長は速やかに理事会に諮り、異議申立書に理事会の意見書を添え、総会に再審を諮る(同条四項)。

(三) 原告に対する除名手続の概要(甲一〜三、五の1、2、六、八の1〜3、乙一〜一〇、一二、一四の1、2、証人神戸義二、原告本人)

(1) 被告県歯科医師会会長は、平成六年七月ころ、原告に処分事由があるとして、調査書(乙三)を作成した。

(2) 同年一〇月一三日に開催された被告県歯科医師会の理事会において、右調査書をふまえて、原告は「本会の体面をけがした者」及び「本会の綱紀を乱した者」(定款一五条二号、三号)に該当するとして、原告を除名するのを相当とする旨の議決がされた(乙四)。

(3) 被告県歯科医師会会長は、右処分案に除名は相当であるとの意見書(乙六)を付して、同日、右処分案を被告県歯科医師会の裁定委員会に諮問したところ(乙五)、同委員会は、同月一五日、除名が相当であるとの答申をした(乙七)。

(4) 被告県歯科医師会会長は、同月二五日、原告の処分について承認を求める代議員会を同年一一月九日に開催する旨代議員に通知し(乙八)、同日開催された代議員会において出席代議員三三名の全員一致で原告を除名とすることが承認決議された(乙九)。

(5) 原告は、被告県歯科医師会会長に対し、右代議員会の当日、代議員会の開催までに処分案、処分理由をファックスにて原告に送付されたい旨の要請書(甲五の2)をファックス送信したが、被告県歯科医師会会長はこれに応じなかった。

(6) 被告県歯科医師会会長は、原告に対し、同年一一月九日、「定款一五条二号、三号所定の事由に該当する者と認め、平成六年一一月九日付けをもって除名処分にすることが決議された」旨、また「この処分に不服があるときは、この通知を受けた日から三〇日以内に書面により異議の申立てをすることができ」る旨記載された本件通知書(甲三、乙一〇)を送付し、同書面は、翌一〇日に原告に到達した。

(7) 原告は被告県歯科医師会会長に対し、同月一五日付をもって、「原告には処分事由がなく、本件通知書には処分理由の説明もなく、弁明の機会を与えず除名という不利益処分を課すのは無効である」趣旨を記載した通知(甲八の1、乙一二)をし、これは同月一六日被告県歯科医師会に到達した。

(8) 右書面を受けて、被告県歯科医師会会長は、原告に対し、同月一八日付けで同月二一日到達の書面(乙一四の1)をもって、除名事由に該当する事実を通知したが、同通知にかかる除名事由の骨子は、以下のとおりである。

ア 原告が、県保健課による本件個別指導は、被告県歯科医師会の神戸前会長らが行わせたものである旨軽信し、又は被告県歯科医師会の役員の不正請求を指摘して自己に対する調査、監査等をうやむやにしようと考え、内情を通じた者を右役員らの診療所に患者として通院させたうえ、右役員らが医療費を不正に請求しているとして、右患者らをして、詐欺罪での告発をさせ、県保健課へ調査の申立てをさせた行為。

イ 前項の被疑事件は不起訴となり、役員らについて特段の不正請求は認められなかったにもかかわらず、原告が、平成五年一月発行の雑誌「歯界展望」のなかで、被告県歯科医師会は保健課と癒着し、役員らは例外なく水増し、架空などの不正請求をしている上、患者による調査申立ては県保健課がもみ消している等と指摘し、以後も各種マスメディアを通じて同様の発言を繰り返し行った行為。

ウ 原告が、平成五年二月一七日、群馬県歯科医療サーベイランス民間委員会代表として、群馬県知事に対し、被告県歯科医師会の役員が不正請求しているかのような陳述書を提出し、同年四月三〇日には、厚生大臣に対し、群馬県では不祥事が相次いでいると虚偽の事実を指摘したうえ、群馬県への指導強化を陳情し、同年一二月一〇日には、健康保健組合等の県内外の関係四三二団体に対し、群馬県において不正請求が広く行われているとの虚偽の事実に基づいて要望書を送付した行為。

エ 原告が、歯科医師界には不正請求が蔓延し、治療によってほとんどの歯が駄目になっている旨の発言を繰り返した外、被告県歯科医師会の現職役員に対し、同人が犯罪的治療を行っているとして、治療費を返還しなければ相応の処置を採ると脅迫的言辞を繰り返した行為。

(9) その後、原告は、異議申立期間内もその後も、本件除名についての異議申立てを行わなかった。

以上の事実を認めることができる。

3  右2の事実を基に、前記1の観点から本件除名処分の手続の適否を検討する。

(一) 本件除名の効力発生時期について

被告県歯科医師会は、同被告における除名処分の効力は、代議員会及び被処分者に対する除名通知によっては生じず、被処分者の異議申立期間の経過により生じると主張する。

しかし、前記認定のとおり、①被告県歯科医師会における除名手続は、会長が、理事会の議決を経て作成した処分案を裁定委員会に諮り、裁定委員会の答申を受けて、代議員会に処分案を図り、処置決定を得、これに基づいて処分方法を決定し、被処分者に通知するとのものであること、②処分後、被処分者において異議申立てをしたときのみ総会が開かれ、再審議されるものであること、③異議申立後の総会に置ける審議を「再審」という文言をもって規定していることなどからすると、除名処分の効力は、代議員会の決議に基づき会長により決定された処分が被処分者に通知されたときに生じると解するのが相当である。

したがって、本件除名は、本件通知書によって原告にその旨通知されたときに効力が生じたものと解される。

(二) 本件除名手続の適法性

(1)  被告県歯科医師会の定款・規則上、被除名者に対する除名事由の告知については、明文の規定はない。しかしながら、除名処分に対しては、異議申立権が付与されており、通常、除名処分に対する異議申立ては、処分理由に対する具体的な反論という形式を取ると考えられることからすると、右定款、規則の趣旨は、異議申立てにあたっては、その処分事由の告知をすることを要求していると解するのが相当である。

そうすると、既に判示のとおり、本件除名のなされる前に処分事由が原告に開示されていない上に、原告が除名処分決定前に開示請求をしたのに、被告県歯科医師会は、これをも拒否するなどしたものであり、本件除名手続には、被告県歯科医師会の定款・規則の趣旨に違背する瑕疵があるとも考えられる。

(2)  しかしながら、①前記認定したとおり(第三、一2(一))、原告は、被告県歯科医師会が本件除名の理由とした事由に関連する多くの点について、長期間にわたり同被告執行部と激しく対立する状態にあり、その間、被告県歯科医師会の裁定委員会で自分の意見を述べるように促されるなどしていたもので、原告の言動が被告県歯科医師会で問題とされていることは承知していたものと思われ、平成六年一一月一〇日の本件除名の通知のされた当時、その後の同月二一日に開示された本件処分事由の詳細はともかく、その概要については推測していたものと推認できること、②除名通知がなされた後ではあるが、異議申立期間満了二〇日前の同月二一日ころには、原告に対して除名理由の告知が行われているものであり、原告は実質的には異議申立てをなすことは可能であったと思われること、③原告が異議申立てを行えば、総会による再審議が行われたと思われること、④被告県歯科医師会は任意加入団体であり、その適正手続の要請は強制加入団体の場合に比して弱いと考えられること等を考慮すれば、除名通知時に処分理由の開示を欠いた瑕疵は重大なものということはできず、本件除名の無効を招来するものではないと解される。

二  争点②(除名事由の存否)について

1  前示のとおり、被告県歯科医師会は歯科医師を構成員とする任意加入団体ではあるが、医道の高揚と歯科医学、医術の進歩発展と公衆衛生の普及向上を図り、社会並びに会員の福祉を増進することを目的とする(定款三条)、公益的性格を有する団体であるから、会員が、その行為により「会の体面をけがす者」又は「会の綱紀を乱す者」と評価されるには、当該行為が、単に会員相互間の親睦を乱しただけでは足らず、右会の目的にもとり(悖り)、社会的相当性を欠く行為でなければならないと解せられる。

2  そこで、まず、除名理由2(囮患者派遣等による告発等)を検討する。

(一) 前記認定のとおり(第三、一2(一))、歯科技工士学校問題や公文書偽造事件を経て、平成二年ころには、原告と被告県歯科医師会の幹部とが対立するようになっていったこと、原告は本件個別指導や実態調査は被告県歯科医師会と県保健課が癒着して行われたと考え、被告県歯科医師会の幹部の不正請求を明らかにして法廷で決着を付けるため、同年四月ころから、原告が主催する自然保護団体の会員約三〇人の協力を得て、当時の被告県歯科医師会の会長であった神戸義二外幹部約七名の各診療所に右会員らを患者として送り込み、診療報酬請求についての情報収集をなしたこと、右情報収集に際し、原告は、事前に各協力者の歯の状態を記録に残し、各診療所での治療後直ちに協力者の口腔内の状況を確認して不正請求の発見に努めたこと、右情報収集の結果、原告は、協力者をして、被告県歯科医師会幹部を前橋地方検察庁高崎支部に告訴・告発させると共に、県保健課に対し、調査の申立てを行ったこと、県保健課による調査により、田中順は一部過誤請求を認めて自主点検の申告をし、国庫に三万〇九二〇円、患者に二八〇円を返還したこと、平成三年までには、右告訴・告発は取下げ、又は不起訴によりいずれも終了したことなどが認められる。

(二) 右のとおり、原告が、被告県歯科医師会幹部らの診療請求の適否を探るため、各診療所に右協力者を派遣して、不正請求の存否を確認した行為は、協力者が患者として派遣された先の診療所が、当該協力者を通常の患者として、真摯に治療行為にあたるであろうことを予測し、これを敢えて利用しようとして送り込んだものであって、本来、患者と歯科医との間にあるべき信頼関係を当初から無視するものであり、社会的に著しく相当性を欠くものである。そして、かかる情報収集が発覚した場合には、被告県歯科医師会会員相互の信頼関係が崩れるものであることはもちろん、被告県歯科医師会会員である歯科医師と患者相互にいたずらに疑心暗鬼を起こさせ、円滑な治療の妨げになることは容易に想起し得るところである。してみれば、原告の右行為は、被告県歯科医師会のみならず歯科医療関係者や患者に対し、広く悪影響を及ぼしたものと見ざるを得ない。

(三) この点、原告は、右協力者による情報収取は、被告県歯科医師会と県保健課の癒着によって実施された個別指導に対する対抗手段として行った相当なものである主張するので、右主張の適否について検討する。

(1) 証拠(甲一一の2、一二、二六、八〇〜八二、八四、八五、九〇、一六〇の1〜7、乙一五、五二、証人神戸義二、同間仁田恭一、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

ア 行政機関と被告県歯科医師会の関係について

① 各都道府県には、各診療所等の保険請求の指導監督をする権限を持つ国家公務員である指導医療官が任命、配置されるが、被告県歯科医師会の要請を受けて昭和六三年一〇月一日に指導医療官に就任した宮下一夫は、昭和六一年度及び昭和六二年度に被告県歯科医師会の保険担当理事をしていた経歴を持ち、平成五年一月一日から同年一二月三一日まで指導医療官の職に就いていた間仁田恭一も、昭和六三年度及び平成元年度に被告県歯科医師会の保健担当理事を務めていた。また、昭和六三年当時に被告県歯科医師会の事務局長職にあった者は、それ以前に県保健課で勤務していた。

② また、各都道府県には、保健医である医師、歯科医師などの診療担当者の診療報酬が適正に支払われるために、診療報酬請求書の審査を行うことを目的として審査委員会が設けられているところ(社会保険診療報酬支払基金法一条、三条、一三条、一四条等)、右審査委員会の委員は、診療担当者を代表する者、保険者を代表する者及び学識経験者のそれぞれ同数から構成される建前となっているが(同法一四条二項)、群馬県においては、歯科医師出身者は診療担当者の枠を占めるのみならず、審査委員会の構成員の大半を占めていた。

右審査委員会では、提出される診療報酬請求書に添付される診療報酬明細書の内容に疑義があったり、明らかでないときは、これを提出した診療担当者に診療報酬請求書を返戻したりして対応しているが、原因は、保険医であった当時、診療報酬請求書の返戻が多く見られた。

イ 原告に対する指導・監査について

① 厚生大臣又は都道府県知事は、保険医療機関の療養の給付や保険医の保険診療等について、指導(健康保険法四三条の七、国民健康保健法四六条等)、監査(健康保健法四三条の一〇、国民健康保健法四六条等)をする権限を有するところ、「社会保険医療の不正請求等に対する指導及び監査について」(昭和四六年二月八日保発第七号都道府県知事宛厚生省保険局長通知)は、診療の内容又は診療報酬の請求に不当の事実があると思われる場合は、すみやかに指導を行うこととし、更に一定期間継続して指導してもなお改善されないときは、監査を行うことと規定し、「社会保険医療担当者の監査について」(昭和二八年六月一〇日保発第四六号各都道府県知事宛厚生省保険局長通知)の別紙「社会保険医療担当者監査要綱」は、被監査医療担当者せん衡の標準として、①診療内容に不正又は不当があったことを疑うに足りる理由があって、監査を行う必要があると認められるもの。②診療報酬の請求に不正又は不当があったことを疑うに足りる理由があって、監査を行う必要があると認められるものと規定し、監査の方法については、原則として監査を行う月前少なくとも二か月分の診療報酬請求書について書面審査を行い、監査前予め患者につき実地調査をすることを建前とすること、つとめて診療に支障のない日時を選び、監査実施の日時、場所をあらかじめ被監査医療担当者に通知することと定めている(なお、平成七年当時、右監査要綱につき改正作業が進められていたが、右の点について大きな変更は予定されていなかった。)。

② 県知事(県保健課)は、原告に関し、不正請求について匿名の情報があったこと、長期間にわたってレセプトの返戻があったことから原告に対して重点個別指導を実施することとし、平成二年二月八日付けで、同月二七日実施予定の個別指導についての書面を送付したが、右書面には、平成元年七月以降に診療した国民健康保健等の関係書類を携行するように指示されていた。

そして、右個別指導の結果、原告には保険外のいわゆる自由診療が顕著に見られるとして、県保健課の指導は、原告の診察を受けた患者に対する実態調査に移行した。

その後、県知事(県保健課)は、原告が開設する丸橋クリニックに対し、平成二年六月六日付けで、「社会保険医療担当者の監査について(通知)」と題する書面を送付し、原告外四名の歯科医師について、県保健課及び国民健康保険課の職員により調査を行った結果、丸橋クリニックから請求された診療報酬明細書の内容に疑義が生じたとして、同年七月一一日及び一二日実施予定の監査を通知した(なお、群馬県知事は、平成二年四月一二日付で同月二七日実施予定の、同年五月一六日付で同月二九日実施予定の各監査についての通知をしたが、いずれも前橋地方裁判所(平成二年(行ク)第一号、同第二号執行停止申立事件)の決定により、その執行を停止された。)。

右六月二六日付監査通知には、監査に際し、平成元年一月一日から平成二年六月一一日までの診療録、レントゲンフィルム、材料購入に関する書類などが携行品として記載されていた。

右監査の後、群馬県知事は、平成二年九月一八日付で、「自主点検調査の依頼について」を送付し、診療報酬について誤請求していた事例があったとして、自主点検のうえ、その報告をする様に依頼した。

(2) 右認定のとおり、歯科診療の診療報酬の適正を確保するため設置され、県保健課と共に県内の歯科医療を監督指導する立場にある指導医療官が、数年にわたって被告県歯科医師会が要請した同会の保健担当理事経験者に委嘱されるポストとして運用されていたこと、また、県保健課を退職した者が被告県歯科医師会の事務局長に就任していること、保険の審査委員会も診療担当者である歯科医が実質的に多数を占め、保険者の代表と学識経験者の三者構成により公正な審査を企図した法の趣旨に則った運用がなされていなかったことなどに鑑みると、群馬県において、歯科医師の診療報酬請求が適正に行われ、また、診療報酬請求に対する公的なチェックが十分に機能していたかという点については、疑義の生じる素地があることも否定できない。

また、原告に対する個別指導や監査については、原告ら丸橋クリニックの歯科医師が携行するよう要請された物は「社会保険医療担当者の監査について」に定める運用基準に比して多量であり、監査の実施についても、匿名の情報によって開始したものであったり、その実施について、二度にわたって裁判所に停止決定を受けるなど、不自然かつ拙速な面があることは否定できない。

しかしながら、個別指導や監査等については、原告には以前からレセプトの返戻が多数見られたのであるから、被監査者のせん衡の標準である「診療報酬の請求に不正又は不当があったことを疑うに足りる理由があって、監査を行う必要があると認められるもの」にあながち該当しないとは言えない。

したがって、前記各事実だけから、現実に県保険課等行政が被告県歯科医師会の幹部等の診療請求について有利な取り計らいをするなど、その間にいわゆる癒着が存在したとまでは認めるに至らない。原告本人はその主張に沿う供述をするが、他にこれを認めるに足る客観的あるいは的確な証拠はない以上、右供述だけからその主張事実を認めることはできない。

そうすると、原告に対する個別指導や監査の実施も行政と被告県歯科医師会の癒着によるものとまで断定することはできず、この点についての原告の主張は、採用することができない。

(3) なお、原告は、被告県歯科医師会幹部らの不正請求の証拠を得るためには、協力者による情報収集以外に有効な手段がない旨供述するが、原告の目的を可とするとしても、被告県歯科医師会には代議員会や総会などが組織されているものであるし、県(保険課)や厚生省等公的監督機構も存在するのであるから、診療報酬請求の適正な運用を図るためには右のような民主的及び合法的手続を利用することにより実現するべきであり、協力者による情報収集のような社会的相当性を欠く方法での実力行使に出ることが正当化されるものではない。

3  以上のとおり、原告がなした協力者による情報収集は、被告県歯科医師会会員の相互の信頼関係のみならず、歯科医師と患者との信頼関係をも不当に侵害する社会的相当性を欠く行為であって、杜会や会員の福祉の増進を目的とする被告県歯科医師会の目的からして許容されないものであるといわなければならない。

したがって、原告の前記除名理由2の行為は、少なくとも「本会の綱紀を乱した者」に該当することは明らかであるから、被告県歯科医師会が主張するその余の除名理由の存否を検討するまでもなく、本件除名は適法であるといえる。

三  争点3(不法行為の成否)について

1  証拠(甲六六の23〜25、乙四二、五九、六一、六二、被告村上本人)及び弁論の全趣旨によれば、被告村上が前記第二の一4に記載したとおりの原告を批判する発言(以下「本件発言」という。)に至った経緯は以下のとおりであると認められる。

(一) 平成四年四月ころ、被告県歯科医師会は、患者による被告県歯科医師会幹部らの告訴・告発に原告が関与したことを知るようになり、そのころ被告県歯科医師会の専務理事に就任した被告村上が、被告県歯科医師会の理事会において、原告とのトラブルの処理を担当する、いわゆる「丸橋担当理事」に指名され、事実関係の調査や原告との交渉に当たることとなった。

(二) そして、原告が、新聞雑誌などに対して原告の個別指導や監査等に関連して、被告県歯科医師会と県保険課との癒着、あるいは被告県歯科医師会役員の診療報酬の不正請求等の発表をし、また、県知事や厚生大臣に対する陳情等をするに至ったので、被告県歯科医師会は、原告が指摘する事実は虚偽であり、原告の陳情を取り上げないよう要求する陳情を行うこととし、その署名方を広く会員に呼びかけた。

(三) そして、右署名の呼びかけの一環として、被告村上は、被告県歯科医師会の立場から、前橋市歯科医師会の会員に対し、「丸橋問題」について理解を得るために、講演を行い、本件発言をした。

2  右認定した経緯に基づき、本件発言の内容及びその結果について検討する。

(一) 被告村上の右発言は、原告を新興宗教の教祖に例え、異常な性格と指摘し、また、原告の著書を悪書と評価したうえ、歯科医師である原告を研究というものを何も知らない人物であると決めつけるなど、その内容は、社会的相当性を欠き、原告の社会的評価を毀損するとともに、その名誉感情を害するものであるものと言わざるを得ない。

(二) この点、被告村上は、本件発言に及んだ目的は正当であり、根拠ある事実に基づく発言であるとして違法性が阻却されると主張する。

しかし、右原告の名誉を棄損するとされる発言部分について、これを真実であると認めることのできる的確な証拠はない。また、本件発言に及んだ経緯は前記認定のとおり、患者による被告県歯科医師会幹部に対する告訴・告発や原告の新聞雑誌における発言についての被告県歯科医師会としての立場、見解をその構成員に対し説明し、理解を得ることを目的としたものであり、その目的は是認し得ないでもないが、本件発言の内容の相当部分は専ら原告の人格・性格について攻撃し、新興宗教の教祖に例えたり、異常な性格と決めつけ原告の名誉を侵害したもので、右目的を前提としても、到底違法性が阻却されるべき正当性を見いだすことはできない。

したがって、右被告村上の主張は採用することができない。

四  争点4(謝罪広告の適否と損害額)について

1  原告は、本件発言により原告が被った損害を回復するには、前橋歯科医師会の会報に謝罪文の掲載を命じ、かつ、慰謝料の支払いが必要であると主張する。

確かに、前記三1で認定したとおり、被告村上が、原告と同業者である前橋歯科医師会の会員の前で、原告の性格の異常性を強調すると共に、その著書を根拠のない悪書と決めつけられるなど、歯科医師としての資質を問われかねない本件発言をしたことからすると、本件発言により、原告の社会的評価及び名誉感情が侵害された程度は小さくないと推定される。

しかしながら、原告は、本件発言以降も被告県歯科医師会の不正の実態があるなどと各種マスコミを通じて発表し、自己の主張・反論をする機会を得ていること(乙三二、三四)、本件発言から既に相当期間が経過していること、その他本件に現われた一切の事情を勘案すると、本件発言により原告が被った損害の回復のために、名誉回復手段として謝罪文の掲載を命ずるまでの必要性があるとは認められず、その損害を回復するには慰謝料の支払をもってその精神的苦痛を慰謝することで足りると解する。

2  そして、右慰謝料の額は、本件事案の性質、態様に鑑み、五〇万円をもって相当と認める。

また、弁護士費用については、本件訴訟の経過、難易、右慰謝料の額、その他の事情を総合勘案すると、一〇万円が相当である。

第四  結論

以上のとおり、原告の請求は、被告村上に対し金六〇万円及び内金五〇万円に対する平成五年五月二一日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田村洋三 裁判官館内比佐志 裁判官齋藤巌)

別紙お詫び<省略>

別紙誹諦・中傷記事一覧<省略>

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